2022.12.12

AdHocアプリを社外ユーザに配布できるのか

前回の投稿で AdHoc がテスト用途に限らず利用できることを紹介しました。

ADEPからADPへと誘導しているAppleの言い分は「ADEPでの台数無制限な無審査配布はもう許さないけど、ADPのAdHocなら100台限定で審査なしの配布ができるよ」ということです。

上限があっても無審査で配布できるのが都合が良い場合もあることでしょう。ただ、AdHoc配布を活用する場合に注意しておきたいのが配布可能範囲。ADEPのInHouseと同様に自社従業員だけなのでしょうか、社外の人に配布するのはどうでしょうか?

本稿では、前回投稿に続きADPの契約書を読み解いて「ADPでのAdHoc配布は誰に行えるのか?」について紹介します。

 

契約書では AdHoc の配布範囲について一条項割いている

Apple Developer のサイトにはADPの契約書が公開されています。PDF形式で誰でもダウンロードすることができます。


(日英の両方で提供されているがオリジナルの英文契約書に目を通すことが推奨される)

この利用許諾契約の 7.3 Distribution on Registered Devices (Ad Hoc Distribution) にAdHocでの配布可能範囲について詳細が記されています。以下に同条項の最初の一文を引用します。

7.3 Distribution on Registered Devices (Ad Hoc Distribution)
You may also distribute Your Applications for iOS, watchOS, iPadOS, and tvOS to individuals within Your company, organization, educational institution, group, or who are otherwise affiliated with You for use on a limited number of Registered Devices (as specified in the Program web portal), if Your Application has been digitally signed using Your Apple Certificate as described in this Agreement.

同条項の最初に配布対象が列挙されていますね。英文を分解して読み解くと、AdHoc アプリを distribute(配布)できる対象は Your (ADP契約主体の)、

  • company (会社)
  • organization (組織)
  • educational institution (教育機関)
  • group (グループ)

の individuals within (内部の個人)、または

  • who are otherwise affiliated with You

であると明記されています。列挙された前者4項は明らかにADP契約主体に所属する従業員やスタッフを指していると解釈できますが、後者は少し広い範囲で解釈ができそうです。affiliated with をどう解釈するか、これによって配布可能先が変わってきそうですね。

 

affiliated with を読み解く

affiliated を英和辞典(ジーニアス英和辞典)で調べると以下のように定義されています。

[形] 提携関係にある;系列の、付属の、加盟した

また著名な英英辞典(Collins コウビルド 英英辞典)によると affiliated は以下のように解説されています。

[ADJECTIVE] If an organization is affiliated with another larger organization, it is officially connected with the larger organization or is a member of it.

また利用許諾契約書の日本語版7.3の対応箇所では以下のように記されています。

本契約の規定に従い、デベロッパは、iOS、watchOS、iPadOS、およびtvOS向けのデベロッパのアプリケーション を、デベロッパの社内、デベロッパの組織内、教育機関内、グループ内の個人、またはデベロッパと提携関係にある者に 対して、限定数量の登録デバイス(プログラムウェブポータルで指定)で使用するために配布することができるものとし ます。

この3つの情報から弊社では who are otherwise affiliated with You を、ADP主体のグループ企業や資本関係を有する企業、または販売契約等に基づく販売網構成企業と解釈しています。

これが狭すぎる解釈か広すぎる解釈かは企業によって見解が分かれるかも知れません。間違いなく言えるのは不特定な第三者は含まれないということです。なお、7.3条の続く文章にはこんな記載もあります。

You also agree to be solely responsible for determining which individuals within Your company, organization, educational institution or affiliated group should have access to and use of Your Applications and Registered Devices, and for managing such Registered Devices.

意訳すると、誰が配布先に該当するのかの判断は自己責任ですよ、というわけです。

 

以上、AdHoc配布が可能な範囲について言及しているADP利用許諾書の7.3条を紹介しました。

ザックリとは、身内や関係者と言えるのならAdHoc配布先としても良いのではないか、という気もします。ただ安易に判断せず、AdHoc配布を実際に行おうとするエンドユーザ企業それぞれが契約書をよく読んで判断すべきでしょう。本稿が読み解く参考になれば幸いです。

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