2022.3.7

業務用アプリの配布方法 全7種類一覧

(最終更新日 : 2023/1/5)

業務用アプリを配布する方法は、全て列挙すると実に7種類もあります。どの配布方法を選ぶべきかはアプリの特性や各社の状況によりますので、一通り配布方法を知っておくのは良いことです。


(用途やアプリに応じて様々な配布方法がある)

そこで本稿では全ての配布方法の概要を網羅的に紹介します。また、各方式について詳細を記している本サイトの別投稿へのリンクも紹介しますので、詳しく知りたい場合は各リンク先を参照して下さい。

本稿は、アプリの配布方法に迷った時の道標として使えるページです。是非、本稿をブックマークして頂き、アプリ配布方法に迷ったら参照するようにして下さい。

 

配布方法全7種

以下に一覧を列挙します。

種類 実装種別 用途 必要なもの
AppStore公開アプリ ネイティブ 公開アプリとして申請して配布 MDM,ABM
カスタムApp
(AppStore非公開アプリ)
ネイティブ 非公開アプリとして申請して非公開に配布 MDM, ABM, ADP
非表示App
(AppStore非表示アプリ)
ネイティブ 公開アプリとして申請しURLを知る人だけに配布 ADP
InHouseアプリ ネイティブ 開発したアプリをAppleに申請せず非公開配布 MDM, ADEP
Webクリップ Web Webをネイティブアプリのように見せかけて配布 MDM
TestFlight ネイティブ テスト用途のみ
関係者に申請前・本配信前のアプリを配布
ADP, TestFlight
AdHocアプリ ネイティブ 開発したアプリをAppleに申請せず非公開配布
ただし予め端末IDを登録に対してのみ配布可
ADP

 

AppStore公開アプリ

AppStore上に公開されている既存アプリは全てABM+MDM経由で配信することができます。例えば Box や DocuSign など既存アプリを業務でそのまま使う場合が該当します。


(業務用バージョンを別アプリとしてAppStore公開しているものもある。上手はBoxの例)

ABMやMDMという言葉が初見という方は以下を参考にして下さい。

ABMでAppStoreのアプリを一括購入(VPPということもある)してMDMに同期して、MDMから配布します。


(ABMでAppStoreにあるGMailアプリを一括ライセンス購入する様子)

多くのMDMで、アップデート時の振る舞いをアプリごとに制御できます。


(アプリ毎に自動更新するかどうかを決めることができる。上手はBizMobile Go!)

自動で更新させることもできれば、明示的な更新を強いることもできます。通常は自動更新としておくのが良いでしょう。

 

カスタムApp

現時点(2022年3月)で、特定企業用の非公開アプリを無制限に配信できる唯一の方法です。

AppStoreのインフラをそのまま使いますので、ADP(Apple Developer Program)の契約が必要で、アプリ毎にAppleの審査が必要です。


(AppStoreに申請する際に、実は「非公開」を選択できる)

審査が通ればそれで完了…ではありません。ABMから当該カスタムAppを一括購入し、MDM経由か引き換えコードを使った配布をする必要があります。カスタムAppについては以下に記事をまとめていますので御覧下さい。

 

非表示App

2022年に新たに登場した配布形式です。

AppStore公開アプリではあるものの、AppStoreアプリでの検索に出てこなくなり、当該アプリのURLを知っている人だけがインストールできるという配布形式です。

例えば「特定組織内で限定的に使うわけではないが第三者に見せる必要のないアプリ」で利用できます。

AppStoreへの通常のアプリ審査の他、非表示化を申請して受理される必要があります。申請時に合理的な理由(なぜカスタムAppではないのか)を説明することが求められます。詳しくは以下をご覧下さい。

 

InHouseアプリ

ADEP(Apple Developer Enterprise Program)の契約を締結できている組織だけが利用できます。現在その契約を持っていない組織ではこの配布方法は事実上採用不可です。

AppStoreインフラを使いませんので審査は不要です。配布台数制限もなく、MDMとABMの連携も不要で、最もシンプルで理解しやすい配布方法です。詳しくは以下の投稿をご覧下さい。

なお、ADEPを契約済である企業であっても、ADEP契約が更新できなくなってきている点は注意して下さい。2022年に入ってから ADEP の更新を Apple に拒絶されたとの報告が幾例かあります。更新を拒否された場合、急いでカスタムAppを使った配布体制に切り替える必要があります。以下を御覧ください。

ADEPを継続できている企業は、規約違反で契約取り消しとならないよう注意しましょう。以下で規約違反になるパターンをおさえておくことをお勧めします。

 

Webクリップ

WebサイトやWebシステムをアプリのように配布する形式です。MDMを使ってWebのショートカットを配布するようなイメージです。


(アプリのように見えるが実はWebサイトのショートカットという例)

ハードウェアの機能を使わない、オンライン前提にできる、通知はメールやチャットで十分、といった条件を満たせる環境なら、わざわざネイティブアプリを開発しなくても擬似的にアプリ配布が可能です。

面倒なAppleへのアプリ申請やABMの操作等が不要になります。MDMさえ用意できればアプリ配布ができますので、ネイティブアプリ開発に課題がある場合、積極的に活用を検討すべき配布方法です。アプリ開発の知見が余りないWebシステム会社にとっては、アプリ開発提案の「亜種」として採用できる可能性があります。詳細は以下にまとめていますのでご覧下さい。

 

TestFlight

アプリの申請前や、申請後の本配信前に、関係者限定のテスト用途で使用する配布方法です。

前述したAppStore公開アプリやカスタムAppを使って業務用アプリを配布する場合に、アプリの初回配布前のフェーズや、アプリのアップデート版の本配信前テストに使用します。

ADPの Apple Developer サイトでテストしたいバージョンを指定し、テスターをグループ単位や個人単位で紐付けます。


(これまでInHouseでの配布経験しかない企業は TestFlight をよく理解することが求められる)

テスターは情シス担当者、社内評価担当者等が対象となります。テスターのiOS端末には TestFlight なるApple公式専用アプリを予めインストールしておく必要があります。

TestFlightアプリでインストールされたテスト用アプリには、有効期限が90日、旧バージョンにいつでも戻せる、などの特徴があります。なお、TsetFligth は原則、本番運用アプリで使ってはいけません

 

AdHocアプリ

上限100台という台数制限があるものの、審査不要のアプリ配信が可能な方法です。動作対象端末のUDID(端末識別子)をあらかじめ収集しておく必要があって運用は少々面倒です。

UDIDを紐付けたAdHoc用の Provisioning Profile を使ってアプリを署名して生成した .ipa ファイルは、UDIDが一致する端末でのみインストール・起動できるようになるという仕組みです。


(UDIDを登録した権限ファイルを生成する様子。生成したファイルをビルド時にアプリに紐付ける)

インストールには有線・無線の両方が使えます。それぞれ以下を参照して下さい。(前者のタイトルはInHouseアプリだが、AdHocアプリでも使用できる)

また、AdHocアプリの用途や配布先制限については以下を参照して下さい。

 

以上、業務用アプリの配布方法7種を解説しました。詳細についてはそれぞれ対応する投稿がありますので併せてご覧下さい。

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